Wu Chang

白黒無常|IdentityⅤ

トップノートは、しっとりとしたオゾンの香りから始まります。静かな水気を感じる、繊細な印象の香りです。
音もなく降り注ぐ雨を思わせる香りのため、雨の夜に傘をさして静かに佇む姿をイメージさせます。しとしとと降る雨が、見つからぬ探し人に焦がれる心を思わせる切ない香りで、「白」を思わせる香りです。

ここからミドルノートになると、がらりと印象が変わって、力強いウッディ調の香りになります。雨音が遠ざかり、湿り気を帯びた大地がその存在感を増していくような印象です。ほの暗くも、勇ましさのある香りで、「黒」を思わせる香りです。
パワー溢れる一撃を感じさせる、どことなく攻撃的な雰囲気です。

ただラストノートでは、トップノートの「白」とミドルノートの「黒」とが入り混じり、モノクロの模様を描き出します。
サンダルウッドの静けさに重なる、アンバーの力強い「黒」の深み、甘やかなバニラの「白」い不透明感。これらが混在し、白と黒どちらの存在も感じられます。

全体的にしっとりとしていて、すれ違う二人を濡らしてゆく雨の気配が漂っています。
完全に混じることの無い、でも決して分かたれることの無い白と黒が生み出す、不思議な世界観を感じさせるフレグランスです。