Grave Keeper

墓守|「Identity Ⅴ」

トップノートは、ハーバル調の香りが、辺りを静かに漂います。
まるで静寂に包まれた夜の墓地を思わせるような、ひんやりとした香り立ちです。
人々と群れずに世界から距離を取っていたり、ラズ教会の墓守となり、死者と共に過ごしている彼の、暗闇に溶け込み生きてゆく姿を感じさせます。

ミドルノートになると、先程までの寒々しい香りに少しずつ甘さを与えるように、アイリスが花開きます。
捉えどころのない気配が辺りを漂うような、アンバランスな香り立ちです。彼の取り憑かれたような執着心や狂気が垣間見えるかのような、ほの暗く冷たい甘さです。

ラストノートにかけて、ミドルノートにあるパチュリの渋みが尾を引く中に、オークモスが重なります。
どこか危険な雰囲気を感じさせると共に、冷たい大地に再び足を踏み入れるかのような、しっとりとした空気感が広がってゆくイメージです。
錆びたシャベルで地下へ潜り、土の中を前進する彼の『穴掘り』を彷彿とさせます。

全体を通して、光が射し込まない暗い墓地を思わせるような、冷感のある香りとなっています。
そこへ花の甘さが重なるため、繊細ながら奥深い印象も感じられるフレグランスです。