Naiad

漁師|「Identity Ⅴ」

トップノートは、みずみずしい香りから始まります。
無口でおしとやかな彼女の姿がイメージできるような、愛らしく美しい香りです。
同時に、どこかミステリアスな雰囲気のため、月光の下で冷たく揺らめく水面や、水中を自由に移動するグレイスには誰も触れられないといった、掴みどころのない印象も感じさせます。

ミドルノートになると、ウォータリーなマリンが、しっとりと水気を帯びて重なります。
まるで彼女が流れ着いた村にある湖の水底を思わせるような、暗さと冷たさを併せ持つ香りです。
神女として崇められていたにも関わらず、真の神の怒りを鎮めるために、生贄として捧げられたグレイスの悲痛な心が感じられます。
容赦なく攻撃を仕掛けてくるハンターとしての無慈悲な姿が目に浮かぶようです。

ラストノートでは、フローラルオゾンの柔らかな香りが、辺りを包み込むように広がります。
物語の最後、泡となってしまうグレイスの、胸に抱え続けた辛く苦しい思いや切なさを感じさせる香りです。

全体を通してみずみずしく可愛らしい香りが続きますが、冷たい水を思わせるような雰囲気が少しずつ出てきます。
辛い生い立ちを彷彿とさせるような、グレイスが辿った軌跡を感じられるフレグランスです。