Hatano

波多野|ジョーカー・ゲーム

トップノートは、軽やかな中に甘酸っぱさを含ませたアルデヒドフローラルの香りから始まります。
小柄な彼が見せる愛嬌のある姿や、機関員で集合している際も、一人だけ頬杖をついて含み笑いを浮かべるような、少し小生意気な性格を感じさせる香りです。

ミドルノートになると、ミュゲの花の香りが静かに重なります。
日本からの留学生としてフランスに潜伏した際に、一時的な記憶喪失に陥ってしまった彼を彷彿とさせる繊細な香り立ちです。
いつもスパイとしてまとっていた緊張感が少し緩和された雰囲気や、助けてくれたレジスタンスのメンバーに「これ以上迷惑はかけられない」と一人でドイツ兵に捕まりに行こうとする彼の姿を思わせます。

ラストノートにかけて、ベチバーの香りが辺りを漂い始めます。
どこか温感を感じさせないため、底知れない空気感がどこまでも深く広がり続けるような印象です。
記憶を失っていても、時折頭の中に語り掛けてくる深層心理の自分の声に従って、冷静な状況判断で危機を切り抜けてゆく姿を感じさせます。

最初は軽快な雰囲気を残すものの、どこかひんやりとした空気感が続く香りとなっています。
最後までその本心を見せることは決してない彼を思わせるフレグランスです。