Kyoji Narita

成田狂児|カラオケ行こ!

トップノートは、わずかな苦みと渋みを持つスパイスの、どっしりとした香りから始まります。
それと共に、かすかにオリバナムの甘さが重なるため、スパイシーさの中に、どこか捉えどころのない気配を感じる香りです。
岡聡実の部活が休みの日に、度々姿を現してはカラオケへ連れ出すといった、神出鬼没で少し強引な彼の姿を彷彿とさせます。

ミドルノートになると、重厚感のあるレザーやタバックが、更に香りに奥行きを与えるように重なります。
危険な雰囲気が辺りに満ちてゆく印象で、とても力強く男性的な香りです。
自身の所有する車のグローブボックスに、破門された組員の指が入っていたりするような、ヤクザとしての成田狂児を思わせます。

ラストノートにかけて、人肌のようなぬくもりを宿したムスクが、ゆったりと香り立ちます。
先ほどまでのビターさが少しずつ収まり、穏やかな空気感が辺りを包み込むようなイメージです。
中学生の岡聡実に、タバコの匂いをつけて帰らせるわけにはいかないという気遣いを見せる彼の、本質にある優しさが感じられます。

全体を通して、大人の男性の余裕を感じさせるような、力強くも深みのある香りです。
次第に、じんわりと温かみが出てくることによって、成田狂児の持つ包容力を感じることのできるフレグランスとなっています。