Rachel Gardner

レイチェル・ガードナー|殺戮の天使

※ゲームのネタバレを含みます。ご注意ください

トップノートは、冷たいオゾンの香りから始まります。淡々と揺らめくような、掴みどころのない香りです。いつも冷静で感情をあまり出さず、ザックに刃の先を突き付けられても表情を変えないレイという雰囲気です。
そこに、ひんやりとしたシトラスが重なり、どこか冴えた印象も感じられます。B5フロアでザックに向かって、「お願いがあるの 私を殺して ―」と話し出すレイを思わせるような、寒々しくも澄んだ香りです。

ミドルノートになると、ほのかにカシスの鋭い酸味が香り出します。キレのある香りで、ザックに切られた小鳥を縫い合わせたりザックのおなかを縫おうとするレイの、どこか普通の少女ではない雰囲気が感じられます。
ですがその奥で、かすかにデイジーの花の香りが混じりだします。どことなく落ち着いた甘さがあって、無表情の中に時折垣間見える感情のようなものを彷彿とさせます。自分が役に立てたかザックに聞き、「ああ、ちったぁな」と返されて「……そう」とかすかにほほ笑むレイの顔が目に浮かぶようです。

ラストノートでは、ほんのりとソフトなムスクが香りだします。トップノートからの淡々とした印象が残ってはいるのですが、そこに少しだけ柔らかな印象が混じるイメージで、物語終盤で自分自身と向き合うようになったレイの姿が感じられるようです。
ザックのことを、「神様」ではなく「ザックはザック」と考えるようになり、グレイに「私は、私。それ以上でも以下でもないわ」と告げるレイという雰囲気です。
さらにホワイトシダーの澄んだ印象も重なり、物語最後、涙を流しながら自分を迎えに来たザックと共に旅立つレイを思わせるような香りにもなっています。

全体的に静けさを感じる冴えた印象で、まるで青い月のような雰囲気を感じられる香りです。
孤独感すら思わせるような冷ややかさの奥に、ひっそりと隠れている柔らかさを、ぜひ感じてみてください。