好青年を思わせる爽やかなシトラスジンジャーの奥には、モヤリとした異質さが隠れ、普通とは違う独特のクセを放つ。その香りは次第に、等しく人がもつ果てなき根源欲求を物語る、花の深い甘みに飲み込まれてゆく。
ラブダナムが温（ぬく）みと厚みをもたらせば、道を切り拓くその健康的な歩みの礎となるだろう。
一度出会えば忘れられず、記憶に残り続けるフレグランス。

みずみずしいカシスに重なるハーバル調は少し硬い。しかし徐々に顔を覗かせるチェリーブロッサムの甘みは明るく、豊かというには砕けすぎた表情の数々を思わせる。
余韻を残す柔らかさは癒し手の優しさを、シダーウッドのすっきりとした香りは未体験に振り回されることの楽しさをうたっている。
ありのままに感情をみせる姿が、笑顔を誘うフレグランス。

若々しいベルガモットに重なるピンクペッパーの刺激は、素直ではないドライな言葉とよく似ている。
しかしプルメリアの甘みには彼のスマートさが、サンダルウッドの静けさには仲間を想う気持ちが。時を経るごとに隠しきれない素顔が見えてくる。
器用な手先とは裏腹に、不器用な情が滲（にじ）んでいるフレグランス。

様々な香辛料（スパイス）とバーチが織りなす、胃袋くすぐられる香り。それは、自然摂理に従った生物としてのありのままの姿を体現する。
一方ほのかに甘いバイオレットの余韻と、どこからか漂いくるモスの柔らかさ。それは、仲間と時を共にする者だからこその、純朴な優しさを思わせる。
おいしい食事で活力をもたらす、包容力あるフレグランス。

誰もが心奪われる清廉なウォータリーノート。そこに重なるラベンダーの甘みは、波ひとつない水面に、褪せることなき確かな色をもたらす。
軽やかなベンゾインがふわりと水面を撫でれば、澄まし顔に波紋が立ち、ただひたすらに一生懸命な青年の素顔をさらけ出す。
気苦労の多い真面目すぎる姿に、次第に心がほぐれてくるフレグランス。

まるで抑揚のない淡々としたウィンターグリーン。涼やかで色のないその香りに、フローラルオゾンが透明感を与えると、ただならぬ圧が伝わってくる。
だがそれも時が経てば変化する。ゆるりと漂いだすオークモスは、変わらぬ静けさの中に、確かな人間味を通わせるだろう。
静観する痩身の有り様から、目が離せなくなるフレグランス。