豪奢な家具で飾られた鈍色の世界にゆったりと広がる、フゼア調の深みのある香り。心を奪われるほどに魅惑的な気配が満ちれば、悪戯な微笑みをたたえた男の姿が露（あらわ）になる。
滞りなく流れる日々に翳りを差すように、にじり寄るパチュリの渋み。だが、いつしか広がる穏やかなアンバーは、守るべき温もりを育まんとする胸の内を伝えている。
残酷な運命に翻弄されながらも、未来を信じて希望を繋ぐためのフレグランス。

気品溢（あふ）れるシトラスと共に花開く麗しい薔薇の香りは、己が血に誇りを抱く美しき男の毅然とした佇まいを思わせる。幾重（いくえ）にも折り重なる花弁に隠れたベチバーの渋みが伝えるのは、心に刻んだ高貴なる精神か、それとも重圧が故の苦悩か。
足枷にも似た重みを抱えながらも、それでもなお揺るがぬ決意を固めるようにオークモスが足元に広がり続け、その香りは深みを帯びてゆく。
切実なる理想を掲げながら、永遠を求め手を伸ばすためのフレグランス。

麗らかな陽だまりにも似た明るいスイートオレンジの奥に潜む、無機質なスペアミント。それは、微笑みを浮かべた仮面の隙間から覗く、意志を持たない傀儡の虚（うつろ）のよう。
だがしかし、いつしかプラムブロッサムの優しい甘さが漂い、血の運命（さだめ）の中で見出した光のように晴れやかに広がってゆく。
満たされない日々に別れを告げて、芽生えた想いと共に生きるためのフレグランス。

静かに漂うハーバル調の冴えた気配。どこか硬質な香りは、完璧かつ厳格な居姿の如く、近寄りがたく隙が無い。
その血が負う責務を果たさんとする姿勢を思わせる、穢れなきホワイトフローラル。いつしか紛れ込むムスクの仄（ほの）かな温もりが、跡を継ぐ者の揺れ動く心に寄り添う思慮深さを伝えている。
冷静な眼差しで先を見据え、未来の秩序を保つためのフレグランス。