混じり気のないウォータリーノートは清廉だが、過ぎれば寄る者を拒んでしまう。しかし、その波ひとつ立たぬ水面に睡蓮を浮かべれば、透き通ったその香りが、明日を語るための憩いを生むだろう。
数多の繋がれた手で育まれた温もりは、白檀の穏やかな香りとなって、また次の手を包み込む。
遠く気高き理想に向かって、共に歩むことを知るためのフレグランス。

溌溂と弾けるフレッシュなカシスが、抑えきれない衝動を乗せて駆け抜ける。思い切って地を蹴った足がもつれた時、揺らぐ視界で捉えたローズの凛とした香りが、立ち上がるための力をもたらすだろう。
歩んできた道程は、シダーウッドの澄んだ香りとなって、いつまでも追いかけたいあの背中へと続いている。
何度膝をつこうとも、真っ直ぐに突き進むためのフレグランス。

幾多の叡智が積み重なる様を思わせる、緩やかなバニラの深い甘み。リーフグリーンの涼やかさが、知の結び目を紐解いてゆく。
万象の理を探求する歩みは、手折られざる花のように力強く。傍らを歩む者たちを見守る眼差しは、ムスクのように柔らかく慈しみ深い。
世界を見通し、知ることの本質を愛するためのフレグランス。

陰謀を暴かんとするナイフのように、甘くも鋭く懐に入り込むシプレー調の香り。キレのあるシャープな質感の中には、スパイスの焦がれるような熱が燻くすぶっている。
引いていた手が変わろうとも、アンバーの穏やかな温もりは続く。愛しき願いをいつまでも護らんとするかのように、サンダルウッドの深みある香りが最後まで立ち続ける。
秘めたる不屈の意志によって、信念を果たすためのフレグランス。

スモーキーなウッディ調の香りがもたらす、どこか距離を感じさせる不透明な質感。そこに重なるクローブが温もりと甘みを与え、生まれた隙間に情という解釈を持たせる。
離別と苦悩を経た先には、穏やかなるサンダルウッドと、グアヤクウッドの微かに芯のある香り。それはまさに、不器用ながらも良い結末を手繰らんとする、勇気の萌芽ほうが。
ただ静かに寄り添いながら、共に在ることを伝えるためのフレグランス。

英雄譚に胸躍らせる青年がまとう、飾り気のないマンダリンの香り。そのどこかあどけない甘みが、クリスタルの残光に似たスペアミントの涼やかさに移りゆく。
冒険に高揚した日々、悩み足掻いた日々。かつての記憶をなぞるように、ゆったりと流れるウォータリーノート。すべてを経て残る温かくも清らかな香りは、まだ見ぬ明日に高鳴る胸の鼓動を伝えている。
遠い約束の先で、同じ時を歩むためのフレグランス。

芯を捉えたユーカリの涼やかな香りが、宿敵との決着の刹那に迸った血を浴びてスパイスの渋みを帯びる。身を焦がすような熱は、胸の内の火種と共鳴しながらも、最後に新たな兆しを遺した。
確かな力強さをたたえたトンカビーンズのほのかな甘みは、厳しさの中に滲にじむ深い情。それは気ままに流れては、緩やかに、在るがままに広がってゆく。
蒼の鎧に紅き魔槍を携え、矜持を貫き通すためのフレグランス。

パレットに並べた絵具を思わせる、明るく弾ける種々のフルーツ。水を含ませるように、みずみずしいハニーサックルの甘みを重ねると、輝かんばかりの色は形を変え、混じり合い、無限の想像力を掻き立てる。
彩りの内に香るのは、温もりを帯びたアンバー。隣で戦う仲間たちを、優しく包み込んでいる。
豊かな心と聡明な頭脳で、志を受け継ぐためのフレグランス。

ふわりとしたスエード生地の心地よい肌触りを思わせる、まろやかなアイリスの甘み。刺繍を施す針捌きにも似た、ガーデニアの伸びやかさ。一針一針丁寧に縫われた布が形を成す様は、百合の蕾が開くよう。
着る人を想い、丹精込めてつくられた衣装には、柔らかなムスクの優しさが織り込まれている。
「おかえりなさい」を告げる時まで、帰る場所を護るためのフレグランス。