Puppeteer

人形師|「Identity Ⅴ」

トップノートは、しっとりと湿り気を帯びたオゾンノートから始まります。
どこか淡々とした印象の香り立ちからは、内向的な性格で、家族の中でも孤立しているマティアスの姿が思い浮かびます。
また、タイムの硬質な印象の香りも重なることで、家族から興味をもたれることもなく、まるで血肉を持たない人形のようになってしまった様子も感じられます。

ミドルノートになると、渋みをもつゼラニウムがジワリと広がります。
両親や『ルイ』に対する恨みの気持ちが感じられる、ほの暗さをもつ香りです。
家族から受ける扱いに耐えかね、楽屋に保管していた『ルイ』を燃やしたマティアスの、内に秘めていた想いが感じられます。

ラストノートにかけてウッディ調の香りが広がることによって、淡々としつつも香りに重厚感が出てきます。
身体は回復しているものの、心理的な影響故か、断続的な感覚障害に陥っていたり、何度手放しても戻ってくる『ルイ』に、だんだんと精神が壊れていってしまう、そんな様子を思わせる香りです。

全体を通して、「人形に見える人間」なのか「人間に見える人形」なのか分からなくなりそうなほど、無機質で淡々とした香りが特徴です。
マティアスの抱えた悲しみや恐怖と共に、悲劇の歯車が回り始める様子が伺えるフレグランスです。