Sculptor

彫刻師|「Identity Ⅴ」

トップノートは、ベルガモットが生み出す端正な印象に、愛らしいフルーツが重なるところから始まります。
美しさの中に、まだ少しあどけなさが残る香り立ちです。
かつては無名の彫刻師で、技術的には未熟なところがあるものの、クロード家の人間として期待を寄せられていたという当初のガラテアの姿を思わせます。
しかし同時に、小人症を患っているため身体が一生大きくなることはない彼女の、子供のような容姿がイメージできる香りでもあります。

ミドルノートになると、イランイランを中心とした花々の香りが広がります。
トップノートからさらに洗練された印象へと変化するため、彼女の才能が開花した様子を思わせる香りです。
しかし、どこか研ぎ澄まされた気配も感じられるため、彫像に話しかけたり、父親に捨てられた彫像を追って2階から飛び降りてしまうといった、狂気の一面が見え始めます。

ラストノートにかけて、湿り気を帯びたパチュリが漂います。
ミドルノートに感じられていた研ぎ澄まされた気配から、少しずつほの暗さが出てくるようなイメージです。
ですが、冷たさは残っているため、精神病院からガラテアの姿が消えた後、血まみれの病室には、頭部のない完成された「傑作」だけが残されていたという、おぞましくも静かな様子が伝わってくる香りです。

全体を通して、洗練されていて美しい香り立ちではありますが、どこか大人っぽさと子供っぽさがアンバランスに共存するのが特徴です。
彫刻刀で、自分に相応しい完璧な運命を完成させていくガラテアの姿が感じられるフレグランスです。