黄金色の瞳のように輝くシトラスは甘酸っぱくも力強く、しかし金木犀のまろやかな甘さは未熟でもあり、割り切れないからこそもどかしい。
その身に背負う戒めと覚悟を思わせて、湿り気を帯びたモスが深みをもたらす。両の足で踏みしめた大地にも似た温かくも静かなる香りは、扉を開く胸の内に晴れやかな余韻を残す。
痛みや苦悩を乗り越えてゆく、信念を思い起こさせるフレグランス。

みずみずしいタンジェリンは淡くどこか所在なさげで、しかしサボンノートの甘さが香りの輪郭を際立たせており、その存在感が頼もしい。
鎧の内に秘めた希望を思わせるように、柔らかなホワイトムスクが深みをもたらす。心を繋ぐ強い絆にも似た優しい香りは、扉を開くその体に温もりを宿す。
原則に縛られず選択肢を膨らませる、可能性に満ち溢れたフレグランス。

フルーツの明るい甘酸っぱさがもたらすのは、飾り気のないお転婆な気配。そこに重なるジャスミンの凛とした甘さは、どこか大人びた印象を醸し出す。
信じ抜く清らかな心にも似た、透明感あるホワイトシダーは、まるで全てを包み込むようなムスクの温もりと共に広がってゆく。
ただそこに居る、それだけで安心感をもたらしてくれるフレグランス。

弾ける火花のようなブラックペッパーの刺激の奥に渦巻く、フゼア調の熱感。それは上辺の軽さとは裏腹に、静かなる野心と強（したた）かさを滲（にじ）ませた悠然たる香り。
次第に重なるサンダルウッドの静けさは、進み続ける覚悟を思わせる引き締まった香りでありながらも、どこか穏やかな気配を残し、後に続く者を導いていく。
威厳と情熱を兼ね備えた、上に立つ者に相応しいフレグランス。

端正なベルガモットに重なる、ローズの気品ある甘さ。一切の隙を見せないすっきりとした香りに徐々に宿る温感が、クールな面差しの下に確かにある情を物語る。
一瞬の穏やかさの後に、真っ直ぐに香り立つホワイトシダー。その凛々しい気配はまさに、己の意志で決めた現在（いま）から逃げない覚悟を思わせる。
知性と理性を兼ね備えた、背中を預かる副官に相応しいフレグランス。