Urushibara Itsuki
【トップノート】
レモンやユーカリのすっきりとした香りに、カーネーションがもたらすグリーン調の香りが重なるところから始まります。
難関大学に入学し順当に弁護士になった漆原の優秀さが伝わってくる、清潔感のある香りです。
しかし、グリーン調の香りが微かにキレをもたらすため、鉛筆を転がして自他の結末や結論を運否天賦に任せるような、普通ではない一面を持ち合わせているところも感じられます。
【ミドルノート】
白樺の淡々とした香りと、ヘリオトロープの涼やかな甘みが出てきます。
しっかりとした存在感がありながら、どこか希薄な印象がある淡泊さが特徴です。
全ての人は自分も含めて無価値で、人生はくじ引きのように結果が決まっていると考えている漆原。
そんな彼の、まるで自分の身の回りに起こる出来事に何にも期待していないかのような態度が感じられる、掴みどころがない香りです。
【ラストノート】
ホワイトムスクのふわりと柔らかな香りが出てきます。
ミドルノートの淡泊な香り立ちに比べると、温感や親しみやすさが感じられるようになります。
大切な友人の命が無意味に散っていくのは忍びないと思うような、牙頭を思いやる本音が垣間見えてくる香りです。
天堂・村雨ペアと勝負して敗北したことを「最高の当たりくじ」を引いた、と微笑む姿が思い浮かびます。
【全体的に】
漆原伊月のフレグランスは、弁護士の先生らしいスマートで清潔感のある香りが特徴です。
青春時代に抱いていた夢や情熱を失い漫然と生きてきた彼が、自己矛盾と向き合い、友人と向き合い直し、たった一人の友として在り続けるという、価値のある意味を見出したことで救済されていく様子を感じてみてください。
©田中一行/集英社