Wakui Josuke
【トップノート】
涼やかなベルガモットの香りから始まります。
大人の前では良い子の仮面を被り、するりと人の懐に入り込むといった、表向きの顔が見えてくる香りです。
ですが、その奥にはアニスの力強くキレのある香りが潜んでいます。
良い子を演じるその裏では、刃物で子供たちを脅すといった、危険な雰囲気が感じられるイメージです。
【ミドルノート】
落ち着いたラベンダーがゆったりと広がります。
トップノートのアニスの力強い香りと重なることによって、これまでの涼やかさが薄れて、どこかほの暗い印象へと変化するイメージです。
親に捨てられて養護施設で育ったことによって、自分の人生は負け犬そのものと考えている和久井譲介。
その結果、自分を守るために強がりや虚勢を張り、人を支配しようとしたり、黒須一也に対して殺意にも似た対抗心を抱いたりといった、苦しい過去が故の彼の言動が感じられます。
【ラストノート】
オークモスのナチュラルな雰囲気に、すっきりとしたサイプレスが重なります。
それにより、ほの暗い印象がほぐれて、香りに晴れやかさが出てきます。
「
心を入れ替えて神代一人の下で医学を学び、その努力が認められてアメリカ行きのオファーを掴んだ彼の、黒須一也と出会った当初とは見違えるほどの精悍な佇まいを思わせます。
【全体的な香りの印象】
和久井譲介のフレグランスは、端正な雰囲気の中にもどこか危うさを孕んだところから、次第にすっきりと晴れやかな印象へと大きく変化するのが特徴です。
神代一人や仲間たちとの再会を誓い、そしてここまで育ててくれたドクターTETSUに手紙を残して、新たな舞台で医者として成長を続ける彼の生き様を、香りで感じてみてください。
©真船一雄/講談社